不正引用問題の経緯 -「林業経済研究誌掲載論文の不正引用問題」-

1.問題の発生
 林業経済研究誌に過去に掲載されたX会員(当時)執筆の論文に対して、複数の会員から剽窃ないし盗用との指摘があり、 調査依頼の形で文書化され理事会に提出された。理事会は、理事会内に調査委員会を設置する一方、 X会員に対して意見の有無を問う文書を発送し、それに対する回答を文書で受け取った。

2.学会の対応と判断
 この件に対する調査委員会は5回に及び、その間、さらに関係者からの文書提出を求め、慎重に検討を進めた結果、 調査結果報告が理事会に提出され、ただちに評議員会での審議に附された。
 審議の結果、評議員会において、共同研究であるにもかかわらず担当者の貢献及び執筆が明示されず、 さらに担当者による単独の研究成果が無断で利用されており、単著論文として成立しないものと判断された。 また、X会員からの論文取り下げはなく、研究者としてのモラルに反する行為と認め、当該論文の学会誌からの抹消が決定された。
 理事会は、シール貼付による抹消手続きを進めるとともに、国立国会図書館に対して雑誌記事検索用データベースからの抹消を依頼した。
 X会員からは、内容証明郵便により、学会と争う用意ありとの意思が表明された。さらに、論文抹消手続きの費用負担を求めたところ、請求に応じない旨の回答があった。 そのため、理事会及び評議員会において、X会員の学会員としての処分が検討された。その結果、学会に対する謝罪のないこと、 さらに被害者の精神的な苦痛にも配慮し、X会員への退会勧告ならびに論文抹消の費用を引き続き請求することが決定された。
 X会員からは、学会宛に退会届が郵送され、理事会において承認された。しかし、論文抹消手続きに要した費用の未払いは今も続いている。 また、国会図書館からは係争中とみなされ、NDL-OPXC(蔵書検索・申込システム)のデータベースに、未だ抹消論文が残されている。

 なお、X会員の所属するY大学は、論文引用の不正、研究成果の搾取と博士論文作成の妨害、さらに精神的ハラスメント行為を認め、 X会員を3ヵ月間の停職処分とした。またX会員の研究分野は学生募集が停止された。

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