会長よりご挨拶
林業経済学会は、前身の林業経済研究会が発足(1955年)から数えると、62年を迎えます。また、1978年に研究会を改組して現学会になってから39年になりました。本学会は、森林・林業を対象に社会科学全般にわたる研究を対象としています。一部の方から学会名称を研究対象の実態にあわせて変更した方がよいのではないかという意見が出され、何度かにわたって話合われてきました。確かに「経済」というと、政策学、社会学、人文科学を対象にしていないのではという誤解を受けがちです。しかし、森林・林業の社会科学的なアプローチは、政府による森林管理の視点から林政学が中心になって展開してきたのに対して、戦後、経済学理論に基づいた科学的分析から政策を批判的に検証していこうという運動が若手研究者を中心に拡がり、その主導的組織として生まれたのが前身の林業経済研究会でした。このような経緯から林業経済学会という名称が現在まで継続しているわけです。 現在の学会員数は機関会員を含めて400人を越え、大学、(独法/国立研究開発法人)森林総合研究所を中心とした研究機関、関連団体・企業・NPO等に所属する研究者、国・都道府県の行政職員等によって構成されています。
上述したように私たちの学会の第1の特徴は森林と社会にかかわる幅広いテーマを取り扱っていることです。実際には会員は林業生産だけではなく木材流通・加工、山村問題、さらに森林に関わる環境保全、自然公園管理などを対象とし、手法としても経済学だけでなく社会学や行政学などを用いており、多様なテーマと手法で研究を行っています。学会会則でも学会の目的の第1に「林業、林産業、山村さらには人間と森林との幅広いかかわりに関する社会科学および人文科学の理論的・実証的研究の向上」としています。 第2の特徴は自由で闊達な議論が行われていることです。創設の経緯に示されているように、私たちの学会は権威ではなく真実を求める自由な議論を求めてきており、それは今日も全く変わっていません。また、こうした議論の展開を支えるために学会に評議会・理事会を組織し、民主的な運営を追求し続けています。
一時期衰退していた林業生産は、近年拡大傾向で推移しており、一方で国内外において森林の環境面での役割を認識する世論の動向があります。今こそ、林業と環境の両視点から森林管理のあり方が問われている時代はないのではないかと考えます。本学会が研究者の成果発表の場であるだけでなく、森林・林業界、さらに森林に関心を寄せる社会の人たちが求める森林管理のための研究の発展に繋がればと考えます。今後とも学会大会(年2回)、関連学会との共同シンポジウム、研究会Boxを通して、関心を寄せる多くの皆様に議論に参加していただくとともに、学会会員になって組織を支えていただければ幸いです。
2017~2018年度 林業経済学会会長 枚田 邦宏