新刊紹介

木平勇吉編著
「みどりの市民参加森と社会の未来をひらく」
日本林業調査会
A5判197ページ
初版発行:2010年01月
定価:2,381円(税込2,500円)
http://www.j-fic.com/bd/isbn978-4-88965-195-9.html

版元より
 迷走する森林ボランティア活動の現状と課題を整理し、次のステップに向けたビジョンを描く!

「はじめに」より
 自然保護や地域再生の分野でも「市民参加」という言葉が定着し、多くの人々に抵抗なく受け入れられるようになった。しかし、今日の活動実践の現実には明と暗の側面がある。「明」は、多くの組織ができて、多くの市民が多岐にわたる活動に参加して、社会に認められる制度となり、安定して発展している側面である。「暗」は、数と形が整うにつれて活動の狙いと意義が見失われ、参加者の気持ちから生気が消え、成果が見えなく閉塞感が覆い、活動が停滞し壁に行きあたっている側面である。
 この両側面が「あざなえる縄」のように組み合わさりながら、さまざまな場面で葛藤しているのが現実である。そして、次の新しい段階へ向かって飛躍しなければならないのが現在の市民参加が直面している課題である。まさに転換点に立っているといえる。
 さて、この本は「市民参加」について専門的な関心を持つ人々が集まった「市民参加研究会」によってまとめられたものである。研究会は2007年に始まり、4カ月ごとに集まり、参加者から提案されたテーマが討論された。参加者は自分のフィールド・組織に深くかかわり、事情をよく知り実質的なデータを持っていた。それぞれが現実をどのように受け止めて評価しているかが述べられ、将来の課題にどのように向かうかが主張された。
 9人の執筆者により描かれたフィールドの状況と組織の活動実績は、特に成功したとか、他の活動の模範になる対象ではない。たしかに参加する市民、行政、土地所有者などの関係者の多大な努力が傾注されて、地域社会から信頼されて発展している。それにもかかわらず、さまざまな挫折と先の見えない閉塞感がつきまとい、多くの課題を突きつけられている。
 一方、それぞれの章からは現状に安住しない緊張感と見えない解決策を模索する人々の努力が読み取れる。市民参加が「森と社会の未来をひらく」エネルギーとなることを期待したい。 
        2010年1月 編著者 木平勇吉

主要目次
はじめに
第1章 2000年以降の市民参加論(泉 桂子)
 第1節 研究の射程5
 第2節 目的と方法
 第3節 市民参加の類型あるいはその整理
 第4節 市民参加の正統性
 第5節 まとめに代えて
第2章 住民参加・パートナーシップによる森林管理・利用システム(秋廣 敬恵)
 第1節 本稿の目的
 第2節 用語の整理
 第3節 住民参加・パートナーシップによる森林管理・利用システム
 第4節 千葉県我孫子市「古利根の森」の事例
 第5節 おわりに
第3章 里山保全のための市民参加(松村 正治)
 第1節 はじめに―市民参加が前提とされる時代
 第2節 市民参加の制度化という問題
 第3節 「里山」の定義再考―「私」との関係性で決まる意味
 第4節 里山ルネッサンスから国民参加の里山保全へ
 第5節 市民による里山保全運動の系譜
 第6節 協働時代に求められる里山マネジメント
 第7節 市民参加による里山保全の行方―協働から自主管理へ
第4章 市民と森とを結ぶNPO法人森づくりフォーラム(吉村 妙子)
 第1節 広がってきた森林ボランティア
 第2節 森づくりフォーラムへの着目
 第3節 森づくりフォーラムの変遷
 第4節 まとめ
第5章 みどりのコーディネーションNPOの可能性(佐藤 留美)
 第1節 はじめに
 第2節 市民参加とコーディネーター
 第3節 みどりの市民参加活動
 第4節 コーディネーターの役割
 第5節 東京都立野山北・六道山公園の事例
 第6節 みどりの市民参加を促進するために
 第7節 おわりに
第6章 協働による地域づくり・森林づくり―北海道下川町の試み―(柿澤 宏昭)
 第1節 はじめに
 第2節 下川町の概要と初期の取り組み―クラスター研究会が始まるまで
 第3節 下川町産業クラスター研究会の発足と展開
 第4節 クラスター研究会の「失速」
 第5節 クラスター研究会から生まれた取り組み、そして新たな展開の萌芽
 第6節 まとめ―これからの課題
第7章 参加型協議会による自然公園の統合的保護管理(谷川 潔)
 第1節 はじめに
 第2節 日本、イギリスとアメリカの国立公園
 第3節 レイクディストリクト国立公園の特徴
 第4節 自然公園の保護管理への参加型タイプ
 第5節 国立公園ビジョン2030とパートナーシップ協議会
 第6節 日本の自然公園における参加型統合保護管理
 第7節 参加型統合保護管理を実施していく際の課題
 第8節 おわりに
第8章 水源環境保全における市民参加―神奈川県の参加型税制―(長谷川 朝惠)
 はじめに
 第1節 事業の検討過程の概要
 第2節 県民参加を推進する新たな取組み「参加型税制」
 第3節 「参加型税制」の県民参加を実現する場「県民会議」
 まとめ
第9章 市民協働による自然再生―「丹沢大山自然再生委員会」の試み―(木平 勇吉)
 第1節 はじめに
 第2節 丹沢の自然再生活動の背景
 第3節 丹沢大山自然再生委員会の発足
 第4節 再生委員会の運営と活動実績
 第5節 再生委員会の運営と活動の評価
 第6節 まとめ―再生委員会の将来について―
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